日本は世界でもトップクラスの長寿国です。長生きすること自体は大変喜ばしいことではありますが、一方で、年齢を重ねるとともに、認知症などで判断能力が少しずつ低下してしまうというリスクもあります。また、病気や障がいによって、お金の管理や大切な契約などを自分で行うのが難しくなる場合もあります。そんな「もしも」の時に、ご本人を法律面や生活面で守り、支えるための仕組みが「成年後見制度」です。
令和7年3月に、最高裁判所から、昨年(令和6年)1年間の成年後見制度の利用状況に関する最新データが発表されました。今回は、このデータをもとに、「成年後見制度って、どんな制度なの?」「どんな人が利用しているの?」といった疑問に、分かりやすくお答えしていきます。
【成年後見制度、どのくらい利用されている?(令和6年データより)】
利用を考えた人はどのくらいいるの?(申立件数)
昨年1年間で、成年後見制度の利用を申し立てた件数は 41,841件。前の年よりも約2.2%増えました。高齢者や障がいをお持ちの方が増えていることや、制度について少しずつ知られるようになってきたことなどが背景にあるようです。
制度にはどんな種類があるの?(申立ての内訳)
成年後見制度は、「法定後見」と「任意後見」という2つの制度に分かれます。このうち「法定後見」には、判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3タイプがありますが、最も申立てが多かったのは、判断能力が特に低下した方をサポートする「後見」で、全体の約68.8%でした。また、元気なうちに将来に備えておく「任意後見」の利用の申立て(任意後見監督人選任の申立て)は、全体の約2.1%でした。
誰が利用を申し込んでいるの?
一番多かったのは、ご本人の居住地の市区町村長からの申立てで、全体の約23.9%でした。身近に頼れるご家族がいない場合などに、行政がご本人のために手続きを進めるケースが増えているということです。次に多かったのはご本人自身からの申立て(約23.5%)で、ご本人の「子」からの申立て(約19.3%)と続きます。「自分のことは自分で決めたい」「早めに備えておきたい」と考える方が増えていると考えられます。
どんな目的で利用されているの?
申立てのきっかけで最も多かったのは「預貯金の管理や解約」(38,561件)でした。次に「生活や介護の手続きなど(身上保護)」(30,599件)、「介護保険サービスの契約」(18,623件)、「家や土地の売却など(不動産の処分)」(14,990件)と続いています(複数の利用目的があるケースあり)。日々の生活や財産を守るために利用されていることが分かります。
利用する方の状況は?
判断能力が低下した原因で最も多いのは「認知症」(約61.9%)です。次いで「知的障がい」(約9.7%)、「統合失調症」(約9.2%)となっています。年齢別に見ると、やはり「80歳以上」の方が最も多く(男性の約35.0%、女性の約63.6%)、次いで「70歳代」(男性の約28.0%、女性の約18.5%)となっています。また、最近では障がいをお持ちの若い方の利用も増えています。
誰が「後見人」に選ばれているの?
制度の利用を申し立てると、ご本人をサポートする成年後見人等が家庭裁判所によって選ばれます。昨年選ばれた成年後見人等のうち、親族が選ばれたのは全体の約17.1%でした。一方、親族以外(弁護士・司法書士・社会福祉士といった専門家など)が選ばれたケースが約82.9%と、大多数を占めています。これは、お金の管理や手続きが複雑になっていることや、ご本人に身寄りがないこと、ご家族自身も高齢であることなどが理由として考えられます。
特別な検査(鑑定)は必要なの?費用は?
「利用するには難しい検査が必要?」と心配されるかもしれませんが、家庭裁判所の指示で判断能力について専門家に詳しく意見を求める「鑑定」が行われたのは極わずかで、全体の約3.8%でした。ほとんどの場合は、鑑定不要で手続きが進んだということです。また、実際に鑑定が行われたケースのほとんど(約87.1%)において、鑑定費用は10万円以下でした。
手続きはスムーズに進む?
申し立てられたケースの約95.0%は、制度の利用が認められています。また、手続きにかかる期間も、全体の約93.8%が申立てから4か月以内となっています。
【制度のこれから ~知っておきたいこと~】
利用する人が増えています
高齢者だけでなく、障がいを持つ若い方など、制度を必要とする人は増えています。それに伴い、ご本人をしっかりサポートできる後見人等(特に専門家)の役割がますます大切になっていますが、地域によってはなり手が不足しているという課題もあります。
頼れる人がいない場合は?
ご家族がいない場合などでも、市区町村長が申立てを行うことで制度を利用できる場合があります。
制度がまだあまり知られていない?
とても大切な成年後見制度ですが、残念ながら、まだ内容がよく知られていない面もあります。特に、元気なうちに自分で将来の備えをしておく「任意後見」という方法は、もっと活用されても良い仕組みです。自分で信頼できる人を選び、将来どんなサポートをお願いしたいかを契約で決めておくことができます。
もっと使いやすくできないの?
ご本人の状況に合わせてより柔軟に制度を利用できるように、今まさに、国(法務省)でルールの見直しなどが検討されています。例えば、後見人の権限の範囲を見直したり、後見人の交代をしやすくしたり、一定の期間制や、必要性がなくなれば利用を終了することができるようにしたり、任意後見をもっと利用しやすくしたり、といったことが現在話し合われています。
【まとめ】 将来への不安、私たちにご相談ください
成年後見制度は「まだ先のこと」「自分には関係ない」と感じていらっしゃる方も多いかもしれません。しかし、誰もがいつか判断能力が不十分になる可能性があり、この制度は、そんな「もしも」の時にご自身や大切なご家族の財産と暮らしを守るための重要な仕組みです。
弊社では、成年後見制度に関するご相談はもちろん、ご家族構成や財産状況、そして何よりもご本人やご家族の想いを丁寧にお聞きした上で、成年後見制度以外の対策(遺言や家族信託など)も含めて、最適な将来への備えをご提案しています。経験豊富なコンサルタントが、難しい法律や制度の話も分かりやすくご説明し、皆様の不安に寄り添いながら、安心できる未来への道筋を具体的にお示しします。「何から相談したらいいか分からない」という方も、どうぞご安心ください。まずは、皆様のお話をお聞かせいただくことから始めます。
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