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令和7年路線価発表で考える「二次相続」のリスク

2025.08.01

相続税や贈与税などを計算する際の土地評価の基準となる令和7年(2025年)の「路線価」が、7月1日に発表されました。ニュースでは「地価が上がった」という明るい話題が目立ちますが、実は、地価が上がっても下がっても、将来の相続でご家族が大変な思いをするリスクが潜んでいます。

特に見落とされがちなのが「二次相続(ご夫婦のうち後に残された方が亡くなるとき)」です。

今回は、多くの方が気づいていない「二次相続」の落とし穴と、ご家族の未来を守るために今から考えておきたい大切なポイントについてお伝えします。

 

 

「配偶者の税額軽減」の“罠”と地価上昇のダブルパンチ

 

ご夫婦のどちらかが先に亡くなられたとき(一次相続)には、「配偶者の税額軽減」という非常に大きな相続税の優遇制度があります。これは、配偶者が相続する財産が「法定相続分」または「相続税評価額で1億6千万円」までであれば、配偶者に相続税がかからないというものです。

「残された妻(夫)に金の心配をさせたくない」「夫(妻)が遺してくれた大切な財産だから」というお気持ちから、この制度を最大限に活用し、配偶者の方が多くの財産、特にご自宅などの不動産を相続するケースをよく見かけます。

しかし、この選択が、将来、お子さんたちに大きな負担を強いることになる場合が少なくないのです。

 

なぜ「二次相続」で問題が大きくなるのでしょうか?理由は主に3つです。

     1 、最も効果的な相続税の優遇制度である「配偶者の税額軽減」が使えない。

     2、相続人の数が減るため、相続税がかからない非課税の枠(基礎控除額)が小さくなる。

     3、親と別居しているお子さんが実家を相続する場合、「自宅の土地の評価額を最大80%減額できる特例(小規模宅地等の特例)」が使えず土地の評価額がそのまま高額になってしまうことがある。
 

この状況で、もし路線価が上がっていたらどうなるでしょうか?

二次相続で母親が亡くなった時、お子さんは「3つの不利な条件」のもとで「価値が上がった不動産」を相続することになり、想像を超える高額な相続税に頭を悩ませることになるのです。

 

 

【シミュレーション】

どれくらい相続税の負担が変わるのか、具体的な例で見てみましょう。

《前提》

家族構成:父親、母親、お子さん2人(2人とも独立して持ち家あり)

父親の財産:2億円(自宅の土地1億円、金融資産1億円)

10年後の変化:地価が50%上昇し、土地の評価額は1.5億円に。母親が父親から相続した金融資産は生活費などで2,000万円に減少。

 

  • 一次相続(父親の相続)

母親が自宅土地と金融資産8,000万円を、子がそれぞれ1,000万円を相続。

この時、「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」を活用すると、一家の納税額は約160万円で済みます。

多くの場合、この時点では遺産額の割に税金の負担が少ないため、安心してしまいがちです。

 

  • 二次相続(10年後、母親の相続)

母親の財産(価値が1.5億円に上がった自宅土地+金融資産2,000万円)をお子さん2人で相続します。今度は「配偶者の税額軽減」も「小規模宅地等の特例」も使えません。その結果、お子さん2人の納税額は、合計で約2,440万円にまで跳ね上がります。

 

もし、一次相続の前、あるいは遅くとも一次相続の直後に、二次相続までを見据えた対策をしていれば、お子さんの負担は大きく減らせた可能性があるのです。

 

 

今から考えておきたい、未来のための対策

 

では、どのような対策が考えられるのでしょうか?お持ちの不動産の状況によって、考え方は異なります。

 

<路線価が「上昇」しているエリアにお住まいの方>

 

◆二次相続まで考えた遺産分割を

「ご家族にとって、一次相続の際にはどのように財産を分けるのが最善なのか?」を冷静に考えてみましょう。目先の税額だけでなく、ご家族それぞれの人生設計や資産の状況を考慮し、二次相続まで含めたトータルの税負担がどうなるかを、専門家に依頼してシミュレーションしてみることが大切です。

 

◆資産の組み換え

「このまま土地を持ち続けると、将来子どもたちが納税に困るかもしれない」という場合は、価値が高騰している今のうちに売却して納税資金を確保し、残りを安定した資産に換える、というのも一つの選択肢です。

 

◆生命保険の活用

将来お子さんたちが支払うことになる相続税を、生命保険を使って計画的に準備しておく方法もお勧めです。不動産を相続した子が他の兄弟姉妹に支払う「代償金」の準備にも活用できます。

 

<路線価が「下落・横ばい」のエリアにお住まいの方>
 

地価が上がらないエリアでは、資産が「負動産」、つまり収益を生まない、かえって維持費がかかる不動産になってしまうリスクがあります。

 

◆「負動産」になる前の対策

将来の管理費や固定資産税の負担がどれくらいになるかを計算し、「このままでは子どもたちに負担をかけ続ける」と感じるなら、早めに売却して現金化することも賢明な選択だといえます。現金にすることで、将来の分割もしやすくなります。

 

◆リノベーションなどで資産価値を高める

「このままでは資産価値が下がる一方」という場合でも、例えば、学生向けに間取りを変えたり、高齢者向けにバリアフリー化したりするリフォーム・リノベーションで、新たな価値を生み出せる可能性があります。手持ちの現金を使っても、借入金でまかなっても、相続税の節税に繋がります。

 

 

相続対策で大切なのは、目先の税金を減らすことだけではありません。ご家族の10年、20年先を見据え、大切な“資産”と“想い”を、皆が幸せな形で次の世代へ引き継いでいくことです。

今回の路線価の発表をきっかけに、ご家族の未来について、そして大切な資産をどう引き継いでいくのかについて、ご家族で一度じっくりと話し合ってみては如何でしょうか。

ご不安な点があれば、いつでもお気軽に弊社にご相談ください。

 

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江頭 寛
福岡相続サポートセンター 代表取締役社長
  • 上級相続支援コンサルタント
  • 家族信託コーディネーター
  • 承継寄付診断士2級
  • CFP
  • 宅地建物取引士
  • ライフ・コンサルタント
  • 二種外務員

生前対策から相続発生後の申告・納税に至るまで、皆様から寄せられる無料相談への対応や、希望する幸せな相続の実現に向けての対策立案と実行支援を、弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士等の先生方をコーディネートしながら日々やらせて頂いてます。お客様にとってベストな相続並びに資産の有効活用を徹底的にサポートすることが私の最大の使命です。また、相続対策セミナーも全国各地で積極的に開催中。まずはお気軽にご相談ください。